プロジェクト

レポート作成日:2022/03/15

【3/14実証実験実施決定&3/18関連プロジェクト設置・メンバー募集中!】世界初・LTE-M通信(スマホで使われる回線)を利用したカワウ対策GPSロガーの開発実証実験を実施します

  • カワウの近景(出典:水産庁HP)

  • カワウにGPSロガーをつけた姿(出典:日本バイオロギング研究会会報)

2022年2月、「日本製カワウGPSロガーを開発し、全国のカワウ対策を手助けするプロジェクト」が立ち上がりました。

 

1 カワウ被害の状況
カワウは体長約80~85cm、体重は約1.5~2.5kgと比較的大型な鳥で、魚食性で海沿いから川沿いまで日本全国に幅広く生息しています。

 

かつては人間とカワウはお互い共存していましたが、カワウの数が増え、漁業被害や、ねぐら付近での臭いによる被害など、近年は人間との軋轢(あつれき)が起きています。

 

本県でもカワウの食害は深刻です。県内のカワウの捕食による水産資源の被害額は、平成29年度で3億円を超えました。
特にアユは、各河川において漁業協同組合の方々が毎年稚魚を春先に放流し、その数を維持していますが、カワウが稚魚を食べてしまうので、釣れるアユの数が少なくなっています。このままでは釣り人が減少し、翌年のアユ稚魚の放流数も減少せざるを得ないという悪循環に陥いる恐れがあります。

 

2 保護管理対策
これ以上の被害を増やさないよう、県は、年間の捕獲数の上限を設け、毎年1,500羽程度捕獲を行いながら繁殖抑制も行っていますが、生息数や被害の減少には至っていません。
※カワウの繁殖抑制方法は既に確立しており、ドローンなど新しいツールも活用されています。
参考「Let'sドローンでカワウ対策vol.2」https://www.jfa.maff.go.jp/j/enoki/attach/pdf/naisuimeninfo-20.pdf

 

3 解決に向けた課題
カワウは活動領域が広く、季節ごとに県境をまたいで行動する個体も多く、県全体及び近県とも協力して対策する必要があります。
本県においても県全体で一致団結して一斉に対策に乗り出すべく働きかけを進めていますが、連携が進んでいないのが現状です。

 

この一番のボトルネックですが、「カワウがどこに巣を作り、どこに飛んできているのか正確にデータとして把握できていないこと」です。
カワウの飛行情報を得るためには、「GPSロガー(※)」が必要です。
※太陽電池で稼働、GPS情報を取得し、定期的に特定の種類の電波で外部に発信するIoT。カワウにランドセルのように背負わせて取り付ける

 

現在、全国で使われているGPSロガーは、海外製で値段が高く、100m程度しか届かないVHF波で電波を飛ばすものです。
電波を取るためには、大きなVHFアンテナを持った人が木の下で息を潜んで待ち続け、夜中に木の上の巣に戻ってきた群れから電波を受ける必要があり、高価かつ測定が非常に大変であることから、これまでは多数のロガーを導入することができませんでした。

 

4 実証実験の内容
プロジェクトでは、国内製、安価でLTE-M通信で電波を飛ばせるGPSロガーの開発を目指して議論を進めてきました。
LTE-M通信であれば、全国に設置されている基地局で電波を受けることができるので、巣の下で待ち続けることが不要となり、なおかつ安価に普及することも可能となります。
このような機器の開発・普及に成功すれば、本県だけではなく全国のカワウ被害の解決につながるものであり、デジタルハブの実証実験として行うことについて2022年3月14日(月)にとちぎデジタルハブ実証実験審査会を開催し、実施適当の評価を受け、実施が決定したものです。

 

今後、委託契約を締結し、具体的な開発及び県内フィールドにおける使用テストを実施してまいります。

 

※2022年3月18日追記
18日、関連プロジェクトの「カワウを発見・通報する仕組みによりヒトの力で飛行データを取得するプロジェクト」が立ち上がりました。
これはGPSロガーによるデータ取得を補完する目的で、釣り人などによる目撃情報を集める仕組みが作れないか検討するものです。
ぜひ解決方法をお持ちの方々のアイディアをお待ちしております。(現在メンバー募集中です)
https://www.tochigi-digitalhub.jp/project/pre.php?id=244

 

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